「世の中の変化や困難に立ち向かう根気強さ」を育む個別指導を軸に、子どもたちが安心して過ごせる“第三の居場所”として、総社市常盤地区に開校した Owl After School(以下:アウル/総社市駅南1丁目21−20)。塾生一人ひとりとのコミュニケーションを大切にしながら、子どもたちの成長に丁寧に向き合う学習塾です。
今回は、元小学校教員であり、アウルを立ち上げた杉原さん・北川さんに、独立に至った経緯や総社の印象、そしてこれからの展望についてお話を伺いました。
教員という安定から、一歩外へ──二人をつないだ縁と決断
元々は小学校教員として働いていたお二人。
北川さんの奥さんと杉原さんが中学校時代の同級生だったことをきっかけに、縁がつながりました。
「妻も小学校教員で、転勤先で杉原さんと再会したんです。そして、なぜか妻の学校関係の飲み会に僕が呼ばれて(笑)。そこで初めて杉原さんと話したのですが、価値観が合うなと感じました」
当時、お二人とも「このまま教員を続けるのか、それとも別の道に進むのか」悩んでいた時期だったそうです。
北川さんは、なんと庭師に憧れ、夏休みの間にインターンにまで参加していました。
「昔から自然が好きで、芸術にも興味があったので、庭師ってかっこいいなと思って。実際は真夏に草抜きをしていただけなんですけどね(笑)」
この夏を乗り越えたら内定を出すと言われて、本気で転職を考え始めた頃、杉原さんから声がかかりました。
「教員を辞めて、一緒に塾をやらないかと誘われたんです。ずっと敷かれたレールの上を歩いてきた人生だったので、新しい世界に踏み出してみたいという気持ちが強かったですね」
肉体労働である庭師という仕事の厳しさに不安もあり、最終的にはアウルの立ち上げ・塾講師としてのキャリアに魅力を感じて挑戦することを決めたと北川さんは振り返ります。

一方、代表の杉原さんも、5年間小学校教員として働く中で、大きな組織の一員であることに次第に違和感を覚えていったといいます。
「教員って、どうしても決められた枠の中でしかできないことが多いんです。自分の考えと違っても、上からの指示に従わなければならない場面も多々あって。最初のうちは新鮮でしたが、だんだんとルーティーン化して、刺激がなくなっていきました」
転職サイトを眺めながら、起業という選択肢も考えていたタイミングで、北川さんとの出会いがありました。
さらに、その時、心強い助言者も現れます。
総社小学校近くで学習塾「学塾 誠和学舎」(運営:一般社団法人ON-DO)を営む高山さんです。杉原さんが大学生時代に知り合った人物でした。
「しっかり教育のバックグラウンドのある二人なら、きっと大丈夫。同じ理想を掲げる塾が複数あった方が、地域にとってもいい」
競合を懸念するどころか、背中を押してくれた存在でした。

常盤地区を選んだ理由は、規模の大きな小学校が近くにあり、集客面で有利だと考えたこと、そして何よりも「タイミングよく良い物件に出会えたこと」でした。
以前も商業利用されていたその物件は、カフェのような落ち着いた雰囲気で、大掛かりなリノベーションも不要でした。
「たこ焼きパーティーをしながら、どこかいい物件はないかと軽い気持ちで不動産サイトを開いたら、その日に掲載された物件が出てきて。すぐに電話して、ほぼ即決でした」
とはいえ、杉原さんには迷いもありました。
「結婚して子どももいたので、この安定を手放して本当に大丈夫なのか、と」
それでも、家族の後押し、北川さんの存在、地域の同業者の助言、吉備信用金庫からの融資など、好条件が重なり、「これは挑戦するしかない」と覚悟を決めます。ちょうど人事調査の時期でもあり、書類に「退職希望」と記入し、退路を断ちました。
こうして、いくつもの縁がつながり、アウルは誕生しました。



学童×塾という発想──3つのコースに込める思い
「アウル」とはフクロウの英語名。短くて覚えやすく、親しみやすい響きという条件で動物の名前から探して決めたものです。後から調べてみると、フクロウはギリシャ・ローマ神話において「知の神」(知識の神様、知恵の象徴)とされていることを知り、塾の理念とも重なって、より愛着が湧いたといいます。
アウルでは一斉授業はなく、個別指導を徹底しています。
コースは、学童的要素を取り入れた「メリハリコース」、小学校高学年向けの「学習コース」、中学生向けの「個別コース」の3つです。
「原点は、学習と遊びをかけ合わせたメリハリコースです。学童が足りずに困っているご家庭や、働けない親御さんがいる現実を見てきたので、その受け皿を作りたいという思いが強かったです」
開校当初はこのコースを中心にしていましたが、次第に高学年や中学生のニーズにも応える形で、コースを拡充していきました。
「中学生になっても、やっぱり小学校の学習内容の積み上げが大事。学校では難しい個別指導を、ここでしっかりしてあげたいです」
教育現場での経験を土台に、「子どもたちの成長に本当に必要なことは何か」を日々模索しています。


メリハリコースでは、1時間の勉強の後、近くの常磐公園へ遊びに行くことも多いそうです。
「30代に入って体力がきつくなってきました」と笑いながらも、子どもたちとは全力で向き合うお二人。
「この間、30分くらい長縄を回し続けたら、肩を痛めて、翌日発熱しました(笑)」
「遊具鬼をしていて子どもに挑発され、本気で追いかけていたら、指を軽く折ってしまって…(笑)」
日頃からの全力の関わりが、子どもたちとの信頼関係を育み、安心できる居場所をつくっています。

創業の地・総社で感じた暮らしやすさと人の温かさ
創業の地に選んだのは、杉原さんの地元・総社。
「まずは土地勘や人脈のある場所で小さく始めるのがいいかなと」
一方、移住者である北川さんも、総社の住みやすさを実感しています。
「岡山市出身で、大学は山梨でしたが、総社は雪が少なく、自然もあって、本当に暮らしやすいです。地域の温かみも感じるし、暮らす分には全然不便がないですしね」

「子育て王国」を掲げる総社市。創業当時から児童数は多かったものの、最初の集客には苦戦しました。広告・チラシ・SNSなどの媒体でできる限り宣伝してみましたが、開業時の塾生はたったの一人。子どもより先生の方が多いという状況に、北川さんは思わずスーパーのアルバイトなどを探したそうです。
しかし、現在は70名を超えるまでに成長。
「やっぱり口コミですね。来てくれた子を大切にすることで、自然と輪が広がっていったと思います」
お二人の地道で真摯な姿勢が、信頼へとつながっていきました。

小さな声に応える、新たな一歩
現在は総社を拠点にしながら、週に2回、吉備中央町へも出張指導に出向いています。
きっかけは、杉原さんが以前担任をしていた子どもたちからの要望です。
「今後は、地方にあるこうした小さなニーズにも応えていきたいです」と語る杉原さん。
一つの場所で無理に人数を増やすのではなく、少人数制で丁寧に関わるスタイルを大切にしながら、他地域への展開も視野に入れています。


教員時代に培った経験と、そこから見えた課題。
大きな組織を飛び出したお二人だからこそできる、地域からのアプローチがあります。
「教員だけが教育を担う必要はない。違った角度からでも、子どもたちを支えられる」
地域で育まれる子どもたちのための未来づくりが、これから総社で広がっていくことを期待せずにはいられません。
杉原さん・北川さんから、創業を考えられている皆様へ
教員としてだけでなく、地域の大人として、違った角度から子どもたちの居場所をつくり、成長を支えていくことに、私たちは大きなやりがいを感じています。
総社には、挑戦しようとする人を支えてくれる方々と出会えるチャンスがたくさんあります。同じ想いを持ち、地域で何かを始めてみたいと考えている方と、ぜひ一緒に挑戦していきたいです。ともに手を取り合い、総社をより良い地域にしていきましょう!
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