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創業レポート/地元経営者に聞く

創業レポート

“応援してくれる故郷”で始めたゲストハウス——旅人と総社をつなぐ場所に

Guest House Mado(ゲストハウス マド)/2025年(令和7年)開業

会社を辞め、パートナーとともに長期の世界旅へ。そこで得た経験をもとに、地元・総社で「ゲストハウス Mado」を開業した小野さんに、Uターンを決意した理由や、ゲストハウスに込めた思いを伺いました。

 

 

 

30代を目前にして会社を辞め、ずっと夢だった世界一周へ

 

3年前、当時勤めていた会社を辞め、パートナーとともに世界へ旅立った小野さん。
「いつか自分も世界を旅するんだろうな」——幼い頃から漠然と思い描いていた夢は、幼少期に夢中になったRPGゲーム『ドラゴンクエスト』の主人公への憧れが原点だったと言います。

 

「結局、世界一周は達成できていないんですけどね」と笑う表情には、ただ観光地を巡るだけではない、田舎好き旅人ならではの充実感がにじみます。

 

有名な観光地よりも、ガイドブックに載らない田舎まちに長く滞在し、ときには同じまちを何度も訪れて、その土地の良さを深く味わう——そんな独自のスタイルで旅を重ねてきました。
現在は写真家・動画クリエイターとしても活動しながら、旅の様子をYouTubeInstagramで発信。彼らの感性で切り取った田舎の魅力を、世界中のファンが一緒に楽しんでいます。

 

 

 

 

 

全国で開催した旅の写真展——総社で“数珠つなぎ”に広がったご縁

 

旅を始めて2年という節目に、小野さんは全国5カ所で旅の写真展を開催しました。
その開催地の一つに選んだのが、地元・総社。会場を探していたとき、総社商店街通りにある古民家「旧堀和平邸(以下、堀家)」を訪れたことが、地元で活躍する人々との新たなご縁の始まりでした。

 

「堀家を運営するNPO法人『総社商店街筋の古民家を活用する会』の理事長・金丸さんとつながったのが最初でした。そこから、金丸さんを通じて、FLCB(総社市役所前のコミュニティスペース)を運営している一般社団法人ON-DOの理事長・高山さんへ。そしてさらに、高山さんから吉備信用金庫・S-スタの内藤さんへと、ご縁が“数珠つなぎ”のように広がっていったんです」

 

その後、FLCBで開催された写真展には、県内外から多くの人が訪れました。
写真や旅のトークを通じて、来場者たちは普段の総社の暮らしの中では得られない、新しい視点や刺激に触れることができました。

 

 

 

 

 

帰ってみたら、総社は“挑戦できるまち”になっていた

 

現在32歳の小野さん。実は、自分がこのタイミングで地元・総社に戻ってくることになるとは思ってもいなかったそうです。

 

「もちろん、実家があったり、小中学校時代の友人がいたりと、居心地の良さは感じていました。でも、働き盛りのこの年代で、しかもフリーランスという立場からすると、仕事の機会や人との出会い、刺激が少ないのではないかと不安があったんです」

 

そんな中、旅を終えて一時的に帰省し、総社での暮らしを再び体験する中で、かつて学生だった頃の印象とはまったく異なる“今の総社”に気づかされたといいます。

 

ゲストハウスを開業するにあたっては、吉備信用金庫の「そうじゃスタートアップサポート」(総社エリアで新しくビジネスをはじめる人を育てていくことを目的にした創業支援制度)の0期生として支援を受けました。開業に向けたアドバイスや、応援金として支給された50万円が大きな後押しとなりました。

 

さらに、福祉や教育などさまざまな分野で挑戦する同世代の仲間が地域に増えていたことも、小野さんにとって大きな励みとなったそうです。

「こんなこと一緒にやってみない?」と声をかけてくれる人がいたり、自分の想いを話せば応援してくれる人が現れたり。一緒に頑張れる仲間がいる——そんな挑戦を応援してくれる風土が、総社には着実に育っていました。

 

思っていた以上に“挑戦できるまち”になっていたことに気づき、小野さんはUターンを決意しました。

 

 

 

 

 

旅人の視点を活かし、総社で「居心地のいい宿」を届けたい

 

長期の旅を通して小野さんが強く感じたのは、「観光名所ではない地域にある、居心地のいい宿」へのありがたみでした。
旅が長くなると、観光に疲れてしまうタイミングが訪れます。そんなときに必要なのは、料理をしたり、洗濯をしたり、たまった作業に取り組んだりと、旅の合間に“ただ暮らす”ことができる宿の存在だったそうです。

 

「宿があることで、はじめて訪れるまちもある。だからこそ、総社で宿をやる意味があると思ったんです」

 

宿泊施設がまだ少ない総社で、自分たちが提供したいのは、旅人がふと“沈没”(=旅中に一つの場所に長く滞在すること)したくなるような、肩の力を抜いて過ごせる場所。有名な観光地ではない総社だからこそ提供できる価値を見出し、「居心地のいい宿」をコンセプトに、ゲストハウスの開業を決意しました。

 

 

 

 

選んだ物件は、総社商店街通りにある民家。7年前、岡山県立大学の学生たちがリノベーションしたもので、現在はNPO法人「総社商店街筋の古民家を活用する会」が管理しています。開業に必要な準備や手続きを終え、予約サイト(Airbnb)に掲載すると、間もなく一人の旅人から宿泊リクエストが届きました。

 

予約してくれたのは、3カ月間日本を旅しているというイタリア人のバックパッカー。ちょうど旅の疲れがたまってきた時期で、静かにゆっくり過ごせる場所を探していたそうです。滞在中は、お互いに料理を作り合うなど、まるで友人のような交流も生まれました。

 

もともと訪れる予定のなかった場所でも、居心地のいい宿があることで人が足を運び、暮らしの一端に触れるきっかけが生まれる——Madoは、そんな「旅とまちをつなぐ」場所として、確かにその役割を果たし始めています。

 

 

 

 

 

いつもの暮らしが、旅人へのおもてなしに

 

旅に出る前も、帰ってきた今も、観光の仕事に向き合い続けている小野さん。現在は行政と連携しながら、山陽・山陰エリアの観光事業に取り組んでいます。
そんな中で、小野さんは最近、「総社の観光のキーワードは“暮らしやすさ”なのでは」と感じるようになったと話します。

 

岡山県内でも「住みやすいまち」として高く評価され、移住者も増えている総社。だからこそ、旅人を特別扱いするのではなく、自然に地域の暮らしへと溶け込めるような関わり方こそが、まちの魅力を伝える近道ではないかと考えています。

 

「観光地として“これから頑張るぞ!”と気合いを入れすぎると、まちに歪みが生まれちゃう気がするんですよね。世界を旅していても、観光客を意識し過ぎるあまり、本来の良さが半減したり、地元の人の態度が変わってしまったまちに、少なからず出会ってきました。
写真映えを狙って無理に“映えるスポット”を作るのも、本質的には意味がない気がしています。まちが持つ本当の“光”を観てもらうためには、地元の人が無理をせず、それでも自然と旅人が喜んでくれる。そんな姿が理想なんじゃないでしょうか」

 

 

 

 

旅先の印象は、出会う人によって大きく左右される――。

旅人としてそのことを実感してきた小野さんは、今では宿のオーナーとして、出会った旅人に総社を好きになってもらえるような“自然なおもてなし”を心がけています。

 

「外の人だから」と特別扱いするのではなく、一人の人として接したい。

 

総社の“中”と“外”をやさしくつなぐ存在として、これからゲストハウスMadoが生みだす人と人とのストーリーが、楽しみでなりません。

小野さんから、創業を考えられている皆様へ
まずは、総社の人とつながってみてください。総社には、とにかく“いい人”がたくさんいます。移住者に対しても、とても親身にサポートしてくれる人ばかりです。そんな「人のあたたかさ」に出会える場所が、いくつかあります。たとえば、S-スタやFLCB、旧堀和平邸などは、移住者や地域の人と自然に関われる場としておすすめです。ふらっと立ち寄ってみるだけでも、思いがけない出会いや情報が得られるかもしれません。
また、条件によっては市の補助金や銀行のサポートが受けられる制度も整っています。移住して何か事業を始めたい方にとっては、とても恵まれた環境だと思います。もちろん、Uターンも大歓迎です。ぜひ総社のコミュニティの中で、自分らしい居場所を見つけてみてください。

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